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日常1割妄想9割な暴走特急で爆進☆日記!
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2024/05/19 (Sun)
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2008/11/08 (Sat)


※空様リクだった☆18歳ピノコ×嫉妬するBJ





 

 





危急存亡




―ジリリリリ…ジリリリリ…

 

診察室で書類や薬品の整理をしていた手を休め、ピノコは受話器をとりにパタパタと居間に走っていく。

「ブラックジャック先生のお宅ですか?」

相手の声は聞き覚えのある声だった。


「静花さん!」

「ピノコさん、お久し振りです。あの…そちらに秀真様はいらっしゃいます?」


どこか焦りを含む声に何か問題が起きたんだなとピノコは察知した。


「秀真さんは来てないけど…いないの?」

「今朝朝食に降りてこないので執事が部屋へ行ったらいなかったんです。無断で出掛けることなどなかったんですが…」

 

 

―静花は秀真の屋敷で働くメイドで彼の身の回りの世話を主に担当している―

そう言い淀むと静花は失礼したと言って電話を切った。


無断外出…か…

ピノコは電話の前でしばらく佇み、口許に手を添え考える。

 

楯内秀真(22)

彼は三か月前ブラックジャックの手により、余命一か月のところ救われた。

ピノコも助手として同行した…というか無理矢理ついてきた、という方が正しいのだが

ピノコは病に侵された者は暗く塞ぎ込んでいることが多いと思っていた


だが秀真は違った。


オペ前後変わらず陽気に笑っている、そんな秀真にピノコは物珍しく感じた。


彼とは気が合い、診察の合間よくちょっとしたことで笑い合ったりしたものだ。


でも決まっていつも先生、患者に負担がかかるからやめろって怒るんだよね…

 

ふふっと思いだし笑いが出てピノコは診察室に戻った。

 


彼はもう大人だ。
過保護な環境の中からたまには抜け出したくなったのかもしれない。


そう解釈したピノコはまた作業を再開する。


が、今度は携帯の着信音がポケットから鳴り響いた。

表示画面を見ると『公衆電話』からだ。


先生かなと思ったが今話題の張本人、秀真からだった。

 

「秀真さん!」

 

彼には携帯番号をもしものことを考え、教えていたがまさかこんな時にかかってくるとは驚いた。


「君に久々に会いたくてさ、…それが途中で道迷って」

照れ笑いしつつも何か以前より明るさがないように感じられた。


「そっちに行くから、場所教えて!」

 

 

********

 



秀真がいるという公園は岬の家からさほど遠くなかった。
ベンチに腰掛けて待つ彼の元へ行くと、変わらずの笑みをみせた。


「静花さん心配してたんだよ、無断で抜け出すなんてアッチョンブリケよ!」

「出掛けるとなるとSP付きだからな…君とゆっくり話したくて」

「ひとまず静花さんを安心させなくっちゃ!」


携帯を取り出し番号を押そうとしたら秀真に取り上げられた。


「後でちゃんと連絡入れるから」

 

確かに今連絡を入れたら数分も経たずに静花さんがやって来るだろう。



その頃
岬の家では……

 


書類と薬品整理をしているはずの奥さんの不在に、疑問を感じる人がここに一人…

 

ブラックジャックはすぐパソコンを立ち上げ、GPSで彼女の居場所を確認した。


ここから近い公園にいるようだ。


全く出掛けるなら置き手紙ぐらい書いてくれよと思いながら家を後にした。

 

 

 

 

 

 

「君と話せてよかったよ」

「ほんと?」


先ほど砂遊びをしていた子供たちはいつの間にかいなくなっていた。
彼の抱える悩みを聞いていたらあっという間に時間が過ぎたが、ピノコは幾分すっきりした表情の秀真を見て人の役に立てたことに充実感に満ちていた。

 


とその時――


「楽しくやってるな…」


すぐ真後ろから発せられた声に二人の肩は同時にビクッと上がった。

 

「ち ちぇんちぇい!!」

振り返ると、黒いオーラを漂わせるブラックジャックがそこに立っていた。


「病気が完治したらな、医者と患者はもう無関係だ。もうピノコと会わないでもらおう」

秀真は気迫ある目にうろたえる。


「先生、秀真さん悩み事があったんだよ!何もそこまで言わな…うっ!?」

ブラックジャックの攻め言葉にカチンときたピノコは反論を言い終わらぬ前に、口許を手で塞がれた。

「お前は黙ってろ!」


頬をぷくっと膨らませてピノコは押し黙る。


「ピノコはカウンセラーじゃないんだ。悩み事かなんか知らんが、聞いて欲しければ専門のカウンセラーをあたればいい!」

「私ではダメですか?」


秀真がはっと顔を向けた先には静花がいた。


「ピノコより適任だと思うがね…」


そう言ってブラックジャックはピノコの手を引いて公園を出た。










「さて、ピノコ」

 

岬の家に戻る車の中、終始無言だったブラックジャックは家に入りやっと口を開いた。


「お前はいつからカウンセラーを始めたんだ?」

ブラックジャックの威圧的なまなざしが痛い。

「今日が初めてよ…秀真さんの声がどこか寂しげだったから心配だったの…でも秀真さん喜んでたし、ピノコ、カウンセラーの素質あるかも!」


あはははと笑い、場を和ませたつもりが逆にブラックジャックを怒らせた。

どんっと強引に両手を壁に押さえ付けられピノコは背中の痛みに声を上げた。

いきなりのことで目をパチクリさせ、ブラックジャックの顔を見上げる。




男と楽しげに話していたピノコにブラックジャックは激しく腹が立った。

 

やめてくれ…

ただ俺だけにその笑顔を見せてくれればいい。

独占欲が心を占める。


「お前は俺の助手だけに専念すればいいんだ!」

「でも…」

「また俺に隠れてこんなカウンセラーもどきを続けてみろ……二度と出来なくさせてやる」

「…へ?なんで…」

 

 

彼は『メス』で人を救う

今日秀真と会って、自分は『メス』ではなく『言葉』で患者を助ける方が向いてるのではないかと感じた
のに


「物分かりが悪い奴だな…今回は良かったがな、相談の中にはかわいいお前をこう求める奴がいるかもしれないだぜ」

そう言うと手首を持つ手をさらに強め、荒々しく唇を奪う。

初めて先生から熱いキスをされ、ピノコは戸惑いと息苦しさを感じた。


くっ…くるしぃ…


抵抗する術すらなく必死に声を出そうとしても打ち消されてしまう。

だんだん意識が朦朧としてきたピノコにおかまいなくブラックジャックは感情を押しつけるかのように攻め立てる。


限界に達し足の力が抜けたピノコの体をサッと腰に手を回して支え耳もとで囁いた。

「分からないなら、一晩中教えてやろうか」


これ以上張り合ったら身が持たないと悟るピノコであった…

 


《終》

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